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らふぁえろ☆あくと

イタリア出身の元画家のブログ

恋に奔放すぎる女神 ヴィーナス

Ciao!こんにちは!

今回は、ギリシャ神話の一番の人気者ヴィーナスについて掘り下げていくよ。

前回は、ローマではギリシャ神話の神とローマ神話の神がある時代から同一視され始めるっていう話をしたよね?(前回の記事はこちら

ヴィーナスもギリシャ神話ではアプロディーテと呼ばれていたんだけど、ローマではウェヌスという神様と同一ということになったんだ。今は英語名のヴィーナスの方が有名だから、今回はこっちで通しちゃうね。

さて、この愛と美の女神ヴィーナスは、AKB48に入れば間違いなくセンターが狙えるくらいの美貌で、例え神セブンであっても追随を許さず、むしろ美しすぎてAKBにはいないくらいの女神だったんだ。

 

しかも美しく成熟した姿でいきなり海から生まれてきたという設定。何その設定?って感じだけど、ギリシャ神話は基本、突っ込みなしのボケのみで成立してるってかんじで、おかしなことが日常的に怒ってる世界だから、あんまり気にしないでね。

 

さて、その設定に従って描かれたボッティチェリ先輩の「ヴィーナス誕生」は、言わずもがなの名作だよね。

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The Birth of Venus, Sandro Botticelli,Uffizi

その他にも、時代は下るけどカバネルのヴィーナスの誕生も有名だね。これも生まれた時からたわわだね。

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The birth of Vemus, Alexandre Cabanel, Orsay

余談だけど、僕、この画家さんの名前好きなんだ。「Cabanel:河馬寝る」なんて、可愛い名前じゃない?

 

・・・滑ったところで、話を元に戻そうか。ヴィーナスがどの時代でも愛されたのは花顔柳腰な姿だけじゃなくて、そのキャラクターにも一因があるんだ。

夫を持つ身でありながら、恋人を作ってしまう恋に奔放な女神ヴィーナスには、絵にしたくなるようなドラマチックなシーンが多い。まず、この絵を見てみようか。

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The Forge of Vulcan, Diego Rodríguez de Silva y Velázquez, Prado

 これは、ヴェラスケスのウルカーヌスの鍛冶場という絵なんだけど、左から二番目の鍛冶職人がヴィーナスの夫であるウルカーヌス(ギリシャ名:ヘイパイストス)だよ。

この絵では筋骨たくましい男性としてそこそこかっこよく描かれているけど、神話ではブ男で足が悪いという設定。自分は見た目で勝負はできないとわかっていた彼は、色々と策略を巡らせて、ちゃっかりヴィーナスと結婚したというなかなかの策士。

さて、この絵に描かれているシーンは、画面の一番左のアポロンが、ウルカーヌスにヴィーナスが浮気をしていることを知らせに来ているところなんだ。寝耳に水といった表情アポロンを見つめるウルカーヌスの表情がなんとも切ないよね。

それよりもっと僕が気になるのは、右から二番目のウルカーヌスの弟子の表情さ。彼はきっと、おかみさん(ヴィーナス)の浮気を知ってたんだけど、親方を傷つけまいと必死に隠してきたんじゃないかな?彼の表情には驚き以上のもの、徒労とかあきれとか、そういった類のものを感じるよ。

 

「え?ずっと隠してきたのに、あんた今ここでそれ言っちゃうの?」みたいな。

アポロンから話を聞いたウルカーヌスはすぐに現場を押さえに行く。それが下の絵。

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Venus Mars and Valcan, Jacopo Tintoretto, Alte Pinakothek 

 描いた画家も時代も違うけど、さっきの絵からの流れとしてとらえると、なんだかムフフって思っちゃわない?

ウルカーヌスは一応、強姦されたのか、合意の上だったのかをヴィーナスに確認したらしいんだけど、答は明らか。ウルカーヌス、可愛そうだね。

相手のマルスは戦いの神で、強くて勇敢なはずなんだけど、実際は右奥のテーブルの下に隠れて、テーブルクロスの間から様子をうかがうことしかできなかったっていうのもなんだかおかしいよね。

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完全に犬に見つかって吠えられてるしね。

さらに左奥では、ヴィーナスの子供クピド(ギリシャ名エロス)が寝たふりを決め込んでるしさ。いろんな可笑しさが詰まった一枚だよ。

ヴィーナスの恋はこれだけじゃなかった。彼女は、人間の男性であるアドニスにも恋をしたんだ。アドニスは狩りが好きで、猟犬をつれてよく狩りに出た。ヴィーナスは危ないからやめてほしと思ってたんだけど、彼の情熱を止めることはできず、ついに事件が起きてしまう。凶暴なイノシシに遭ったアドニスは、そのまま命を落としてしまうんだ。その直前の様子が下の絵。

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Venus and Adonis,Tiziano Vecellio, Prado

 ヴィーナスは女の勘で何かを感じたのか、必死にアドニスを止めてるけど、彼は聞かなかったんだね。このすがりつくような構図はアドニスを止めるヴィーナスの代名詞のようになっていて、いろんな画家が似た構図でこの場面を描いているよ。

 

犬と狩人っぽい男性にすがる女性と天使(クピド)の絵があれば、かなりの確率で、ヴィーナスとアドニスだと思って大丈夫。

 

さてさて、浮気だ不倫だといったスキャンダルって、話題性はあるけど後味が悪いよね。だから、最後にこの絵を用意したよ。

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Venus Valcan and Cupid,Tintoretto,The Pitti Palace

これはフィレンツェのピッティ宮にあるティントレットの絵なんだけど、ヴィーナスとウルカーヌスが仲睦まじく赤ちゃん(クピド)をあやしているね。浮気ばっかりして、ウルカーヌスをひやひやさせるヴィーナスだけど、こういう温かい時間もあったのかもしれないね。

 

まあ、この場面は神話にはないから、画家の完全なる妄想によって描かれたものなんだけどね(笑)

 

さて、今回はここでおしまい。

それでは、A presto!

 

参考文献 ギリシャ神話 山室静 現代教養文庫