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らふぁえろ☆あくと

イタリア出身の元画家のブログ

ゼウスと乙女たち

Ciao!こんにちは。

 

ギリシャ神話の最高神、ゼウスことユーピテルの家族については以前に紹介したよね。 

raffaello-act.hatenablog.com

今回はユーピテルが、晴れて天界一の最高神になった後のお話だよ。

 

ユーピテルの妻になったユノー(ギリシャ名ヘラ、英語名ジュノー)は、ユーピテルの浮気に悩まされれる続ける。今でこそ浮気や不倫はゲスの極みといわれているけど、ルネサンス期の絵画界では、こういった浮気話は人気ネタだったのさ。

 

彼は、セクハラ、パワハラ、職権乱用などあらゆる方法を駆使してお気に入りの女の子に強引に「アタック」していく・・・つまり、世が世なら、連続強姦魔だね。

 

ただし、そこは理不尽がデフォルトのギリシャ神話の世界。こういった痛ましい出来事はギリシャ神話界では‘稀によくある’ことなんだよ。

 

今回は、そんなユーピテルの毒牙にかかって純情を汚されてしまった乙女たちが描かれた絵を見ていこう。

 

あ、ちなみに西洋絵画の歴史画(ギリシャ神話やキリスト教をテーマに描かれた絵)は、元ネタ本がいくつかあるんだけど、これから紹介する4点の絵画はすべて、オウィディウスPublius Ovidius Nasoの変身物語Metamorphosesに基づいて描かれているよ。

まずは、アンティオペのお話から。

被害者ファイル1:アンティオぺ

f:id:RaffaelloAct:20170420234029p:plain

ANTHONY VAN DYCK, JUPITER AND ANTIOPE, MSK Gent

彼女は見ての通り意識のない状態でユーピテルと関係を持たされて、妊娠。詳しい話は省くけど、そのことがきっかけで、一家離散。彼女は投獄され、生まれた子供とも離れ離れになるという散々な人生を歩むことになるんだ。

 

その後の話は、子供たち(双子を出産したと言われているよ)と再会して、国を治めるまでになるハッピーエンド編と、なんやかんやあって酒の神バッカスの怒りに触れて、ギリシャ中をさ迷い歩くことになるバッドエンド編があるよ。

 

 

それにしてもユーピテルのこの悪そうね目を見て!こんなヤツが最高神だなんて、神も仏もあったもんじゃないね。

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でも、これが「フェアって何?不条理こそが世の常でしょ?」っていうスタンスを貫くギリシャ神話の世界観なんだ。

 

ちなみにユーピテルのこの姿は、サテゥロスという半人半獣の森の精に変身したもの。そして、ユーピテルの隣にいる、これまた目つきの悪いワシは、ユーピテルを象徴する鳥なんだ。

 

さて、次の被害者はダナエ嬢。

 

被害者ファイル2:ダナエ

彼女は、とある国王の一人娘だったんだけど、彼女が幼いころに「孫に殺される」という神託を恐れた父親によって、塔に閉じ込められてしまったんだ。もちろん塔は男子禁制ね。

 

ところが、そこまでして隠した娘をちゃっかり見つけてしまうのが、おさかんなる最高神ユーピテル。野獣の嗅覚っていうのは本当に恐ろしいものだよ。

 

塔のセキュリティーは万全で、普通に忍び込むことはできないと判断したユーピテルは黄金の雨に姿を変えてダナエに降り注ぎ、その雨を受けたダナエは即妊娠。

ティツィアーノ, Danae receiving the Golden Rain, Prado

ダナエは国から追放され、生まれた息子ペルセウスは、なんやかんやあって結局祖父を殺し、神託は現実のものとなったんだ。

 

「恐ろしい神託→予防措置→意味なし→神託実現」の一連の流れはギリシャ神話でよく展開される不条理パターンだから、余裕があったら覚えておいてね。

 

そうそう、ペルセウスは以前にこの絵でも紹介したよね?

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Piero di Cosimo, Andromeda freed by Perseus, Uffizi

祖父殺しの大悪党かと思いきや、人間と神のハーフとして、神話の中ではエース級の活躍を見せる英雄に成長したんだよ。

 

さてと、被害者はまだまだいるから、先に進もうか。

 

被害者ファイル3:カリスト

カリストはディアナという、狩りと月の女神の従者だったんだ。ディアナもユーピテルの娘っていう設定なんだけど、この子も合意なしに妊娠してできた子供らしい。ギリシャ神話のゲスっぷりときたら・・・。

 

さて、ディアナは処女神であり、自分に付き従う女の子たちにも処女性を求めていたんだ。カリストも恋をするより、森を駆け巡っているほうが好きなタイプの女の子だったから、ディアナにも可愛がられて、森で楽しく暮らしていたみたい。

 

そんな純粋無垢な少女に目を付けたのが、他の追随を許さないゲスっぷりを発揮するユーピテルだった。

 

今回の手口は実に巧妙で、なんとユーピテルはディアナに変身してカリストに近づいたと言われているよ。ユーピテルと交われば妊娠は不可避なので、もちろんカリストも身ごもった。

 

彼女は被害者とは言え、不条理がまかり通るギリシャ神話の世界はそんなに甘くない。処女性に重きを置くディアナに申し開きなんて通用しないと思ったカリストはずっと妊娠を隠していたんだ。

 

でもある日の狩りの後に、川で水浴びをすることになって、ついに大きなおなかをディアナに気づかれてしまうシーンが下の絵。

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ティツィアーノ, Diana and Callisto, National Gallery of Scotland

布を巻いてお腹を隠そうとしてたんだろうけど、見つかっちゃったんだね。

 

彼女はその後、熊に変えられ、なんやかんやあって最後は空に輝くおおぐま座になったと言われているよ。

 

さて、長かった被害者たちの絵画の旅もひとまず終わりが見えてきたね。次が、今日紹介する最後の被害者、レダのお話だよ。

 

被害者ファイル4:レダ

 

レダとユーピテルの交わりのエピソードは、ヨーロッパでは昔から有名で、多くの画家が描いた主題でもあるんだ。でも、扱い的には色物枠って感じが強かったんだ。

 

まあ、下の絵を見てもらえるとわかると思うんだけど・・・

Cesare da Sesto, Leda and the Swan, Wilton House

エロさのほとばしり具合がすごいよね。鳥の首すら卑猥に見えてくるレベル。もちろん、白鳥は不条理にして絶倫なる最高神ユーピテルが変身したもの。

 

ちなみに、上の絵は模写作品なんだけど、元の絵はダヴィンチさんのものなんだ。

 

ダヴィンチさんって、こういっちゃなんだけど、セクシーな女性を描くのがあんまり得意じゃないの。もちろん優美で美しい女性は大得意なんだけど、そこに色気とか艶とかが一切ないんだよね。

 

そのダヴィンチさんが描いて、こんだけセクシーに仕上がっちゃうんだから、もうテーマ自体が問題作なわけさ。

 

次の絵も衝撃的なセクシー度合いだよ。

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Unknown, Leda and the Swan, National Gallery London

 

もうこれ以上にないくらいエロくて、直接的で、何て言ったらいいのやら。

 

まあ、僕たちの生きた時代は、人間の交わりを描くぐらいなら、動物との交わりを描いた方がまだ破廉恥度が低いっていう、今から考えるとおかしな価値基準があったんだ。そういう背景もあって、こういう絵が描かれたっていうことは、声を大にして言っておくね。

 

でもね、さすがの僕も、この平成の世に、この絵をロンドンの真ん中(ナショナルギャラリー所蔵)で展示しちゃうのは、さすがロックの本場イギリスだなーって思うよ。

 

さてさて、実は驚くポイントは、この構図だけじゃなくて、その作者もなんだ。この絵もまた模写で、元の絵はミケランジェロさんが描いたっていうから、もうビックラぽん吉だよ!あ、変な言葉でちゃった。

 

だって、ミケランジェロさんといえば、筋肉女子を描かせたら右に出る者はいないと言われた、僕らの時代の非エロ系の急先鋒だよ。つまりセクシーな女性なんて描けるはずないのに、この肉感的な艶っぽさといったら!

 

さらにもう一点言わせてもらうとね、下の写真はミケランジェロさんが作った、とある人のお墓を飾ってる「夜」っていう彫刻なんだけど、

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Michelangelo, Night, Tomb of Giuliano de' Medici(part)

ポーズは、上で紹介した絵のレダとほぼ一緒なんだよ。なのに、ぜんぜんセクシーさがないでしょ?

 

大胸筋の上につぶれたトマト載せただけの胸だし。腹筋バキバキに割れてるし。肉感というより筋肉感。これがミケランジェロさんの通常運転なんだ。

 

それを、脚の間に白鳥を挟むだけでこんだけエロ度をあげれるなんて・・・。僕はここに世界七不思議のひとつを見た気がしたよ。

 

でも、色物作品っていうのは、世の批判を受けやすいでしょ?上の2点の絵も、いろんなところからの風当たりが強かったのか、どちらもオリジナルが破棄されてる。

 

真面目な話をすると、これまで、「セクシーすぎる」「エロすぎる」と煽ってきた僕だけど、実際は、色物だという理由で芸術が否定されたり作者が起訴されたりするのは、間違ってると思うんだけどな。

  

なんたって、僕もがっつり模写してるからね(笑)

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Raphael, Leda and the swan, Royal collection

正直、僕のスケッチがいちばん上品なセクシーさを醸し出してると思うんだけど、どうかな?

 

さて、本当はユーピテルの被害者はまだまだいるんだけど、あまりにも多すぎるので今回はこの辺りにしておくね。

 

ユーピテルがどうしてこんなに突き抜けた鬼畜設定をされているのかというと、1つには、どの町もその守護神にユーピテルとの血縁を求めたっていうことがある。

 

例えば、街Aと街Bが戦争を起こした場合、街Aの守護神はユーピテルの子供だけど、街Bの守護神はどこの馬の骨とも知れないトイレの神様だったりしたら、いかにもご利益がなさそうじゃない?

 

だから、うちの守護神だってゼウスの血を引いてるんだ!って多くの街が主張し始めたの。そういうわけで、ユーピテルは子だくさんキャラになり、その過程で鬼畜キャラもプラスされてしまったわけ。

 

そう考えると、ユーピテルも苦労人だよね。

 

さて、それでは、今日はここまで。

Ciao!